代表メッセージ

私は幼少時代を北海道の大自然の中で暮らしたせいか、水、空気、土、植物、動物……で構成される自然はお互いにつながりあい、良い“循環”をしながら生きていることを無意識のうちに学んでいた気がします。言い換えれば、循環しなければ、いつかどこかで必ずバグ(不具合)が起きてしまうということ。
大人になり、自然環境だけでなく、人の営みもまた“循環”することがとても大切であり、さまざまな社会問題を解決する糸口になることに気が付きました。“誰かのため”と思って行動することは、実は、回り回って自分も幸せにしてくれること。そんな“Do Good、Be Happy”な生き方に多くの人が気づけば……と思うようになりました。

「持続可能な未来のために、ライフスタイルや価値観がシフトするよう働きかけたい。そのための情報やきっかけを日々の衣食住を通じて提供したい」。そんな思いから、ファッションブランドのPRを辞め、さまざまな社会貢献活動のPRマーケティングや、社会や環境に配慮したライフスタイルの提案を行うNPOソーシャルコンシェルジュを立ち上げたのが2007年の1月。それから6年。NPOや社会貢献に対する日本人の意識は大きく変わりました。

大学生の就職活動で、一般企業ではなく、NPO(非営利組織)やNGO(非政府組織)を目指す動きが活発になっていますし、社会課題を、事業により解決しようとする”社会起業家”を目指す人も増えています。
メディアでも社会貢献やCSR(企業の社会的責任)に関する番組や雑誌記事はここ数年、本当に多くなりました。女性ファッション誌に至っては、チャリティや社会貢献企画は当たり前のことになり、この4月に創刊された『DRESS』の企画で、“社会貢献大臣”というお役目を拝受することになりました。

大きく意識が変わったといえば、最近しばしば話題になる“エシカル”(倫理的)という言葉もそうですね。NPO設立当初、ロンドンで開催された「“エシカル”が次の消費のメインストリームになる」というテーマのエシカル・コンシューマー会議に出席する機会があり、大いに共感し、帰国後、ファッション誌のインタビューやコラムで頻繁に使うように心掛けました。当時“エコ”や“ロハス”という言葉はすでに広く認知されていましたが、それらをすべて含む意味でもあり、環境や社会に配慮した商品を購入することが一番身近な社会貢献であり、それが大きな社会変化をもたらすのではないかと考えたからです。
商品の売り上げの一部が社会貢献活動に寄付されるいわゆるコーズマーケティング商品だけでなく、障がい者が作る授産品、フェアトレードやオーガニックの商品など、どんな人たちがどこで、どんな環境で作っているのかを消費者が想像しながら選択するエシカル消費の啓蒙活動も行ってきました。多くの人に関心を持ってもらうため、授産施設で働く障がい者と国内外で活躍するクリエイターたちのコラボレーションによる商品開発を行ったり、東京近郊の農家から有機野菜を提供してもらい著名な料理研究家やシェフによるオーガニックな料理教室を開催したり…。08年には、チベット族の貧困を解決するために誕生したファッションブランド「SHOKAY(ショーケイ)」のビジネスも新たに株式会社を立ち上げ、手掛けるようになりました。

そして、東日本大震災以降、今まで以上に人々の意識や価値観が変化し、企業のCSR(社会的責任)やフィランソロフィーに対しても、ただのイメージアップや話題づくりではなく、その本質を問う動きが出てきています。企業のCSV(社会のニーズや問題に取り組むことで社会的価値と経済的価値、その両方を創造すること)に注目が集まり、実際に取り組む企業も増えてきたことは本当にうれしいことです。今後もそういう企業や団体と共に、本当の意味で社会や地球のためになることを行っていきたいと考えています。
いつの日かソーシャルビジネスも一般の企業も、その垣根がなくなる時代が来ることを信じています。“社会貢献”とか、“エシカル”とか、こんなことを声高に言う必要のない、それが当たり前の社会。つまり自分の仕事が必要とされない社会。それが私のゴール、最終的な夢なのです。

2013年8月
NPOソーシャルコンシェルジュ代表理事
SHOKAYジャパンオフィス共同代表
林民子